いしつただしの
どばくちほうろうき。
「合い言葉はー!!」
「世界の壁を倍々プッシュー!!」
「見せ付けるものはー!!」
「ジャパンマネーのそこぢからー!!」
……って、史上最凶に円が弱まってる時に言っても虚しく響くだけである。
それはともかくネバダ州なのである。カジノな訳である。ギャンブル合法の街なのである……って、実はカリフォルニア州もギャンブルは合法なんだけどね。ただスロットが認められてないだけで。
ちゅーわけで、レイク・タホの右下のほうはギャンブルの街となっているのである。客とカジノ側でケツの毛までむしりあう場所なのである。そのためには日帰りではあまりにもこころもとないため、一泊する事になった。ホテルに行って部屋を申し込む。
「Sorry.SoldOut.」
どうしてくれようか、こいつは。仕方ないのでちょいと離れたモーテルのほうに行く。3人といって申し込むと「スイート」が空いててそこなら3つに部屋が分かれて泊まれるけどどうする?とかいわれる。まあ、シングル3つとあんまり変わらなかったのでそこにする。つっても、あくまでモーテルのスイートである。部屋が広い以外はどのあたりがどうスイートなのか良くわからないってほどのものである。
ま、ともかく泊まる場所は確保した。これで一文無しになっても新聞紙のお布団はつかわなくてもよさそうである。で、つぎは飯である。戦いの前の景気付けという事でカジノのあるホテルの最上階のレストランで食おうという事になった。
「Sorry.SoldOut」
ぶち殺してくれようか、こいつは。仕方ないので、一階にあるバイキング形式のところで食う。味はそこそこだったが、やはり敗北感は拭い切れない。
さて、腹ごしらえもすんだところでいよいよカジノへ。きらびやかなネオンの下の扉をくぐればそこはもう、わたくしのちょきんばこである。
しかしすげーところである。ちょっと見回してみると、どうやら最近はスロットが主流のようでずらーっとさまざまな形式のスロットが大量に並べられている。まるで富山のパチンコ店「ノースランド」のようだ(めちゃめちゃわかりづらいたとえだな)。で、そのスロットでは、なんかこんなのや、こんなのや、こんなのや、挙げ句の果てにはこんなのまで商品としておいてあり、こーいったものが25¢で手に入るのである(何千万分の一の確立かは知らんが)。当たったらどうやって日本まで持っていけばいいのだろうか?という心配をしながら(心配の方向が違う)、手慣らしがてらちょっとスロットをやってみる。
20$するのに5分とかからなかった。
おいおい、予定と違うぞ。っていうか、”beat mania”のダブルプレイより物凄い勢いで金が減ってしまうというのはまずいのではないのか?
しかも、こっちのスロットは日本のパチスロと違いレバーを引くだけである。目押しも技術も糞も無い。運だけである。(あえて思考を使う場所といえば、カジノ側がどのあたりに出やすい台を置くかを考え、その台に座る事だけである)。当然単調な作業になりやすい。こんなのは俺の求めていた博打ではない。俺の求めていたものはディーラーとの血で血を洗うような壮絶な頭脳戦である(どんなのだそれは)。ただ、カードはいまいちルールが良く分からないし、さらに私、感情がすぐ表情に出てしまうのである。昔は富山の「ホット・ドール」と言われたものよ(どんな呼ばれ方だ、おい)。そういった理由からちょっとパスしたいところである。あと、サイコロをなげるクラップス(だっけ?)はまったくルールが分からんし、ぜったいにディーラーは思い通りの数字を出せるのである。そんなもの出来る訳も無い。となると、残されたものは…………。
そう、「ルーレット」である。これならルールも知っているし、ディーラーは狙った数字のところに確実に入れられるだろうが、ルーレットの場合は投げた後に張る事が出来るのでそのあたりの不利はクラップスよりはマシだと思われる(台に仕掛けがある可能性もあるが、そこまでいったらそれこそ何も出来ない)。
という訳で、ルーレットの台を探す……が、どーもルーレットの台は少ないようで、何処も混んでいる。さすがに目の色変えてがんがんやってるみるからにあぶなそーなにーちゃん達をどけてまでやる度胸はなかったので、空くまでカジノ内をぶらついてみる。
しかし、ディーラーにはけっこー奇麗なねーちゃんが多い。しかもびしっとしたスーツ姿で制服好きの私としてはたまらんものがあるので写真を撮ろうとしたら、ここのフロアマネージャーのようなおっさんが物凄い勢いでやってきて、
「写真は撮ってもいいけども、ディーラーだけは絶対に撮るな。」
と、物凄い剣幕でまくしたてられる。隠しどりというのも一瞬考えたのだがデジカメにはフィルムが無いので見つかったときにカメラごと壊されでもしたらたまらないので血の涙を流しながら断念。でも美人だったなぁ。あのねーちゃん。一瞬「金髪もいいなぁ」と思ってしまったほどである。
そうやってぶらぶらしてる間に一緒に来ていたKさんはスロット相手に派手なプレイをしているようだ。400$出したかと思えば次にあったときはもうなくなっていたりと非常に男の子な遊び方をしておられる。スロットには基本料金が25¢、1$、2$、あたりがメインで、私のような小市民は25¢でちまちまと遊ぶが、Kさんは「25¢なんかやるだけ時間の無駄」と、1$メインでたまに5$という恐ろしいやり方である。
そんな事をしているものだから当然そのうち金銭感覚がおかしくなってくる。私と一緒に歩いているときにKさんは「これすごいな。」と言って一台のマシンの前に座った。
基本料金が書かれている場所には25とかかれている。なにがすごいのか一瞬わからなかった。
「25$」
おいおいおいおい。本気かこの台……とか思っているうちに止める間もあらばこそ、Kさんは100$札を投入口に突っ込んでいた。表示されたCredit数は「4」。まごう事無き25$台である。Kさんの手が動いた。
1.2ベット&リールボタンを押す。
2.回り始める。
3.はずれ。
4.1ベットボタンを押す。
5.レバーを引く。
6.回り始める。
7.はずれ。
8.1ベットボタンを押す。
9.レバーを引く。
10. 回り始める。
11. はずれ。
100$がカジノ側に搾取されるまで30秒かからなかったわけである。
日本のパチンコ屋であえてとんでもなく負けようとしても、1時間で10万負ける事はまず不可能であろう。しかしここではやり方によっては、1時間で100万円ぐらい簡単に負けてしまうのである。改めて自分は恐ろしい場所にいるんだなと言う事を再認識させられる。
そういった点の恐ろしさは、ディーラー相手のものでも同じであるが、スロットのような「確立」に左右される「機械」ではなく、相手より強ければ勝つ事が出来ると言う点が決定的に違う。つまりディーラーとの純粋な勝負である。ただ、喩えるなら相手はそれで飯を食っているラウ使い。私はやっと連環転身脚が出せるようになってきたぐらいのパイ使いのようなものだとは思うが(それははなから勝てないんじゃないのか?)。そういった事を裏付ける恐ろしい台があった。ルーレットはそれまでに出た数字が過去20個分ぐらい電光掲示板に表示されているのが普通である。これで、次の出る目の予想を立てるわけなのだが、その台の電光掲示板には
「16回連続黒」
という、確立論から言うと「1/X68000」と言った感じの(どんな感じだ)表示がされていたのである。正直なところ、この時点で勝つのは不可能だろうと思い始めていた。
しかし、このまま手をこまねいてみているだけでは何のためにここまできたのかわからない。他に比べてちょっと人が少な目なルーレット台を発見。ディーラーは初老の上品そうな女性である。意を決して椅子に座り100$札を渡し、チップに変えてもらう。
勝負開始である。
結論から書こう。
弘兼憲司のうそつき。
そう、わたしがさっきの喩で書いた「連環転身脚」とは、あの「課長島耕作戦法」の事だったのである。たしかに、数字に絡めばチップは増加する。狙い目に入れば大量のチップがつく。確かにそうだ。事実私も、狙い目に入り、40$ほどプラスになった。
しかし、絡まない事のほうが遥かに多いじゃねーか。
結果、100$はあっというまに搾取されてしまったとさ。
心と財布に深い傷を負いホテルに帰りやけ酒を煽り、就寝。
木下:こうなったわけですな。
吉田:予想通りってとこでしょう。